日本代表はW杯32強で敗退したが、JFAは31億円の赤字予算を組んで未来に投資する決断を下した。 2026年6月29日のブラジル戦(2-1)で敗れた直後、日本サッカー協会は2026年度の予算を発表。収入225億円に対し支出256億円で、31億円の赤字を見込んでいる。W杯北中米3カ国大会の移動・輸送コスト増加が主因だ。直近5試合は2勝2分1敗(LDWDW)と波に乗れず、賞金面でも想定より400万ドル(約6億4000万円)の下方修正を余儀なくされた。
なぜ31億円の赤字が必要だったのか
JFAは「前回の実績ベースで予算を立てている」と語る。2022年カタールW杯のベスト16を想定した2026年度の予算は、32強敗退で賞金が減った。優勝なら80億円、ベスト16でも24億円の賞金が入ったはずが、17億6000万円の準備金のみ。森保ジャパンは「最高の景色」を掲げたが、結果は32強に終わった。それでもJFAは選手報酬や遠征コストの増加を織り込み、31億円の赤字を覚悟で投資を続ける。
選手1人あたりの支出も大きい。JFAの規定では代表活動中の選手に日当1万円、勝利ボーナスはW杯で200万円(引き分けは半額)。カタール大会開催年の22年度も46億円超の赤字予算だったが、これは「過去の利益でコストを賄うタイミング」でもある。W杯イヤーはコストが膨らむ一方で、代表関連事業の収入は167億円に対し支出112億円で55億円の黒字。しかし「指導者普及事業」は53億円の赤字と、将来への投資が目立つ。
世界との差を埋めるための戦略
JFAの収入は225億円。フランス(550億円)、ブラジル(857億円)、イングランド(1118億円)と比べると桁違いだ。それでも2011年の88億円から166億円へと事業費は拡大。2005年宣言「2050年までにサッカーファミリー1000万人、W杯優勝」を掲げ、今年5月には「成長戦略2026-2031」を発表。2031年に300億円規模の事業展開を目指す。
監督の年俸にも差が出る。カルロ・アンチェロッティ(ブラジル代表)は17億円、トーマス・トゥヘル(イングランド代表)は10億円。森保一監督は推定2億円と、資金力の差が選択肢の幅を狭める。だからこそJFAは「ユース育成」「女子サッカー普及」「指導者・審判育成」に重点を置き、総合力を高める戦略を推進中だ。
赤字を恐れず、未来に投資する理由
JFAは東京・文京区の「JFAハウス」を売却し、100億円の売却益を2023-24年度に計上。2026年度の貯蓄額は242億円に達し、赤字をカバーできる財源を確保した。2025年度も最終的に黒字転換したが、JFAは「財政規模の拡大」と「収支均衡」を両立させる成長戦略を掲げる。
MF鎌田大地(クリスタルパレス)はブラジル戦後、「日本サッカーをもっと盛り上げて、国技にしたい」と語った。欧州で活躍する選手の言葉が、JFAの投資戦略の意義を象徴している。将来の才能がサッカーを選ぶ土壌を耕すことこそが、W杯優勝への第一歩。JFAは今、身銭を切ってその未来を切り拓こうとしている。直近の成績は2勝2分1敗(LDWDW)と安定感を欠くが、成長戦略の成果が実る日は近い。
